「MFA(多要素認証)は全員分設定してあるし、うちのMicrosoft 365はひとまず安心」。
そう感じている方は少なくないと思います。ただ、SNSでも業務システムでも、届いた認証コードをほぼ反射的に入力していないでしょうか。その慣れた操作こそが狙われています。

偽のログイン画面に誘導されて本物のコードを入力してしまえば、MFAは通り抜けられてしまいます。

この記事のポイント:

  • 従来型MFAはコードの誤入力を突かれ、認証を中継されて回避されうる
  • パスキー認証とは秘密鍵と生体認証による本人確認。偽サイトでは成立しない
  • Microsoft 365はSMS・音声認証の利用者が対象。棚卸しが第一歩

従来型のMFA(多要素認証)が回避される仕組み

突破の入口になるのは、システムの欠陥ではなく日常の操作です。中間者型フィッシング(AiTM攻撃)では、偽のログイン画面が本物との間に入り込み、入力されたコードをリアルタイムで本物へ中継します。

  • 偽サイトに誘導されると、本物のコードをそのまま入力してしまい、攻撃者に渡る
  • 認証成功後のセッションCookieを窃取されると、認証済みユーザーになりすまされる
  • 身に覚えのない承認通知を連打され、つい承認してしまう「MFA疲労攻撃」もある

狙われているのはMFAではなく、コードを入力する人の操作です。

MFA疲労攻撃=Authenticatorの承認通知を繰り返し送り、ユーザーの誤承認を狙う

パスキー認証とは?従来型MFAとの違い

パスキー認証とは、パスワードの代わりに、秘密鍵と生体認証・PINを組み合わせて本人確認を行う仕組みです。秘密鍵は端末またはパスキープロバイダー(OSやパスワード管理アプリ)で安全に管理されます。

従来型MFAとパスキー認証の比較

従来型MFAとパスキー認証の違い

パスワード+ワンタイムコード方式との比較

比較項目
従来型MFAパスワード+OTP等
パスキー認証フィッシング耐性
認証の材料
ID・パスワード+ワンタイムコード等
秘密鍵+生体認証・PIN
入力して渡す情報
あり(コード入力・承認操作)
なし
偽サイトへの耐性
入力を中継され回避される場合がある
ドメインが一致せず認証が成立しない
鍵・パスワードの扱い
流出や使い回しの影響を受ける
秘密鍵は暗号化して安全に管理される
ログイン操作
コードの確認・入力の手間がある
顔・指紋・PINで数秒

違いの核は「入力して渡す情報」がない点。渡すものがなければ、偽サイトに渡すこともありません。

※ パスキー認証もフィッシング耐性を持つMFAの一種です。従来型MFAを、より強い方式へ置き換える位置づけになります。

Microsoft 365のパスキー対応と、いま準備すべきこと

まず確認したいのは、SMS・音声通話による認証を使っているユーザーの有無です。Entra IDでは2026年9月1日以降、これらが有効なユーザーにパスキーが自動で有効化され、2027年2月1日にはMicrosoft提供のSMS・音声による認証コード配信が終了する予定とされています。影響を受けるのはこの方式の利用者です。

  • SMS・音声通話認証を利用しているユーザーを洗い出す
  • 認証方法ポリシーでパスキーを有効化する
  • 登録キャンペーンを使い、段階的に登録を促す
  • 端末を紛失した際の再登録フローを先に決めておく
Entra IDの移行スケジュールはMicrosoft公式ドキュメントの記載に基づく(2026年8月時点)

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よくある質問(FAQ)

Q
パスキーにすれば、MFAはもう不要ですか?
A

パスキー自体がフィッシング耐性を持つMFAとして扱われるため、MFAをやめることにはなりません。従来型をより強い方式へ置き換える、と捉えるのが正確です。

Q
スマホを紛失したら、ログインできなくなりませんか?
A

パスキーは複数の端末やセキュリティキーに登録できます。予備の登録手段と再登録手順を用意しておけば、業務が止まる事態は避けられます。

Q
全社導入は大変そうですが、少人数から試せますか?
A

可能です。管理者権限を持つアカウントなど、被害が大きくなりやすい範囲から先行導入するのが一般的です。課題を洗い出してから全社展開すれば混乱を抑えられます。

まとめ

  • 従来型MFAは、コードの誤入力や誤承認を突かれて回避される場合がある
  • パスキー認証とは、秘密鍵と生体認証で本人確認するフィッシング耐性の高い方式
  • 2026年9月以降の変更は、SMS・音声認証の利用者が主な対象
  • まずは認証方式の棚卸しから着手したい

MFAの導入は無駄ではありません。ただ攻撃側が先へ進んでいる以上、より強い方式へ切り替える判断が要ります。慌てるより、余裕のあるうちに小さく試すほうが負担は軽く済みます。 認証方式の見直しを進めたい方は、お問い合わせフォームよりお気軽にご相談ください。

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