どこからでも働ける環境を整えるほど、守るべき範囲は広がります。
オフィスの外から社内データへアクセスするのが前提になった今、「社内ネットワークの内側だから安全」という考え方は成り立ちません。とはいえ、制限を強めれば現場から不満が出る——。
本記事では、ハイブリッドワークのセキュリティを、設定する順序から整理します。
この記事のポイント:
- 守る対象は「ネットワークの内側」から、人と端末へ移っている
- 認証・端末・データの3層に分けると、必要な対策が整理できる
- 条件付きアクセスやDefenderは、契約プランで使える範囲が変わる
ハイブリッドワークで、守る対象はどう変わるのか?
境界が社内ネットワークではなくなり、人と端末が守る単位になります。オフィスの外から社内データにアクセスすることが前提になったためです。
- アクセス元が限定されず、場所だけでは可否を判断できない
- 私物端末や持ち出した端末が、業務データに触れる
- 情報が分散し、誰がどの情報を持っているか把握しにくい
- 会議の内容が共有されず、意思決定が遅れる
ゼロトラストとは、社内ネットワークの内側であっても無条件には信頼せず、アクセスのたびに利用者と端末を確認する考え方です。
認証・端末・データの3層で、何を設定する?
対策は3つの層に分けて考えます。一度にすべてやろうとせず、この順で埋めていくと抜けが見えます。
- 認証:多要素認証(MFA)で、パスワードだけのログインをなくす
- 認証:条件付きアクセスで、誰が・どこから・どの端末で使うかを制御する
- 端末:Microsoft Intuneで、業務利用する端末の構成とアプリを管理する
- 端末:Microsoft Defender for Businessで、端末側の脅威を検知する
- データ:データ損失防止(DLP)で、機密情報の持ち出しをポリシーで止める
実務上の注意点として、条件付きアクセスにはMicrosoft Entra ID P1以上が必要です(Microsoft 365 Business Premiumに含まれます)。Defender for Businessは最大300ユーザーの中小企業向けで、Business Premiumに含まれるほか、単体でも購入できます(2026年8月時点)。自社の現行プランで何が使えるかを先に確認すると、検討の手戻りが減ります。
利便性を落とさずに運用するには?
全社員に一律の制限をかけるのではなく、条件を絞ってかける設計にします。一律に厳しくすると回避策が生まれ、ルールが形骸化するためです。
- 普段の環境からのアクセスは、追加の確認を求めず通常どおり通す
- 管理外の端末や想定外の場所からのアクセスに絞って制限する
- Teamsに会話と会議を集約し、情報を探す時間を減らす
- 情報の置き場所を決め、アクセス権限の設計を単純に保つ
セキュリティを強めるほど現場が不便になる、という前提は必ずしも正しくありません。制限の対象を絞り込めば、大半の社員にとって日々の操作は変わらないまま、リスクの高い経路だけを塞げます。
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よくある質問(FAQ)
- Q何から着手すべきですか?
- A
多要素認証の有効化です。パスワードだけでログインできる状態が残っている限り、ほかの対策を重ねても効果は限定的になります。
- Q私物端末の業務利用は禁止すべきですか?
- A
一律に禁止する前に、管理外の端末からのアクセスを制限する設定を検討してください。禁止しても実態を把握できなければ、リスクは残ります。
- Q現行プランで足りるか、どう判断しますか?
- A
条件付きアクセスとDefenderが使えるかを確認するのが早道です。この2つの可否で、追加ライセンスが必要かどうかが分かれます。
まとめ
- 守る単位は、ネットワークの内側から人と端末へ移っている
- 対策は認証・端末・データの3層に分けて、順に埋める
- まず多要素認証、次に条件付きアクセスと端末管理の順が現実的
- 制限は全社一律ではなく、対象を絞ってかける
- 条件付きアクセスとDefenderは、契約プランで使える範囲が変わる
利便性と安全性は、どちらかを削って成り立たせるものではありません。制限をかける対象を絞り込む設計ができれば、両立は現実的な選択肢になります。
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