「SCS評価制度の概要は分かったものの、自社が★3を目指すには何を確認すればよいのか分からない」「Microsoft 365を導入していれば、どこまで対応できるのだろう」

このような疑問を持つ中小企業のIT担当者も多いのではないでしょうか。

SCS評価制度の★3に向けた準備では、セキュリティ製品を追加する前に、現在の設定・運用ルール・社内体制を棚卸しすることが重要です。
Microsoft 365は多要素認証や端末管理、監査などに活用できますが、規程や教育、取引先との取り決めまで、すべてをMicrosoft 365だけで補えるわけではありません。

この記事では、★3に向けた自社の現在地を確認し、取り組む順番を決める方法を解説します。

なお、SCS評価制度の基本や★3・★4の違いについては、こちらで解説しています。
制度の概要から確認したい方は、あわせてご覧ください。

※本記事は2026年9月15日時点の公表情報をもとに作成しています。
SCS評価制度は詳細化が進められているため、申請前にはIPAの公式サイトで最新情報をご確認ください。

この記事のポイント:

  • ★3に向けた対策を、技術・運用・体制の3つに分けて整理できます
  • Microsoft 365で対応できる範囲と、別途対策が必要な範囲が分かります
  • 設定だけでなく、評価時に役立つ証跡の残し方まで理解できます

★3対策はMicrosoft 365の設定だけでは完了しない

SCS評価制度の★3は、一般的なサイバー脅威に対処できる水準として設けられています。取得希望企業が自己評価を行い、その内容を所定の要件を満たすセキュリティ専門家が確認する仕組みです。

準備を進めるときは、対策を次の3つに分けると整理しやすくなります。

  • 技術的な対策:多要素認証、端末管理、マルウェア対策、アクセス制御
  • 運用上の対策:アカウント管理、更新管理、バックアップ、事故発生時の手順
  • 組織・体制の対策:責任者の決定、社内規程、従業員教育、取引先との取り決め
SCS評価制度の★3対策を技術・運用・組織体制の3領域に分け、多要素認証や社内規程、従業員教育などを整理した図
★3に向けた準備では、Microsoft 365の設定だけでなく、運用ルールや社内体制も確認します。

例えば、多要素認証を有効にしていても、退職者のアカウントを誰がいつ削除するのか決まっていなければ、運用面には課題が残ります。

単に機能を有効化するだけでなく、継続して運用できるルールと体制を整えることが大切です。

Microsoft 365で対応できる範囲を3段階で整理しよう

自社の対策を確認するときは、SCS評価制度の要求事項を次の3段階に仕分けてみましょう。

仕分け対象になる対策主に使う機能・必要なもの
Microsoft 365で対応しやすい多要素認証/端末の登録・管理/操作記録の保存/脅威対策Microsoft Entra ID、Microsoft Intune、Microsoft Purview、Microsoft Defender製品
Microsoft 365と運用ルールを組み合わせる入社・異動・退職時のアカウント管理/管理者権限の付与・見直し/社外共有やゲストユーザーの管理/インシデント時の確認・連絡手順上記の機能+社内で定めた手順・承認ルール
Microsoft 365だけでは対応できないセキュリティ責任者や推進体制の決定/従業員への教育/取引先との契約や役割分担/入退室管理やBCP社内規程、教育計画、契約書、物理・組織面の対策
要求事項を3段階に仕分けると、追加設定が必要な範囲と社内整備が必要な範囲を把握しやすくなります。

SCS評価制度では、特定のセキュリティ製品の導入が必須とされているわけではありません。

そのため、「Microsoft 365を導入すれば★3を取得できる」と考えるのではなく、★3対策の一部を支える基盤として活用するという捉え方が適切です。

Microsoft セキュア スコアで現在地を確認する

どこから点検すればよいか迷ったときは、Microsoft セキュア スコアが現状確認の入口になります。

Microsoft セキュア スコアは、組織のセキュリティ体制を数値で示し、Microsoft 365のID、アプリ、デバイスなどに関する推奨アクションを確認できる指標です。スコアが高いほど、推奨される対策を多く実施していることを示します。

確認する際は、次の観点で整理しましょう。

  • 多要素認証の対象から外れているユーザーはいないか
  • 不要な管理者権限や未使用アカウントが残っていないか
  • 利用中の端末と更新状況を把握できているか
  • 社外共有やゲスト利用の設定が適切か
  • 推奨アクションを実施しない場合、その理由を説明できるか

ただし、Microsoft セキュア スコアとSCS評価制度の★は別の指標です。
セキュア スコアはセキュリティ侵害を防ぐ絶対的な保証ではなく、すべての推奨事項が各社の環境に適するわけでもありません。★の取得可否を判断する材料ではなく、Microsoft 365環境の改善点を洗い出すための材料として活用しましょう。

実施した対策は「証跡」として残す

★3の準備では、対策を実施するだけでなく、第三者へ説明できる状態にすることも重要です。
証跡として整理したいものには、次のような例があります。

  • Microsoft 365の設定内容
  • ユーザー、管理者、端末の一覧
  • アカウント管理や情報共有の社内規程
  • 月次・四半期ごとの点検記録
  • 従業員向けセキュリティ教育の実施記録
  • インシデント対応訓練の記録

Microsoft 365導入支援の現場では、「設定は済んでいるが、誰がいつ変更したか分からない」「担当者の頭の中にしか手順がない」といったケースがあります。
証跡ごとに保存先・担当者・確認頻度を決めておけば、自己評価や専門家への説明を進めやすくなります。

証跡は「何を残すか」だけでなく、保存先・担当者・確認頻度まで決めておくと運用が続きます。

まずは優先順位を付けて改善しよう

未対応の項目が多くても、一度にすべてを整える必要はありません。
次の順番で進めると、社内でも説明しやすくなります。

  1. ★3の対象にする拠点・部門・システムを整理する
  2. 要求事項と自社の設定・規程・体制を照らし合わせる
  3. 未対応項目を「技術・運用・体制」に分類する
  4. 情報漏えいや業務停止につながる項目を優先する
  5. 実施内容と判断理由を証跡として残す

特に、多要素認証、管理者権限、未使用アカウント、端末の更新状況は、現在のMicrosoft 365環境を確認するきっかけにしやすい項目です。

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よくある質問(FAQ)

Q
★3を取る前に、対象範囲を限定することはできますか?
A

SCS評価制度では、企業が決定した適用範囲から対象を抽出して評価することが想定されています。対象範囲の具体的な決め方は、今後公開される最新の評価ガイドや専門家の助言を確認しましょう。

Q
Microsoft 365 Business StandardからBusiness Premiumへ変更すれば準備は進みますか?
A

Business Premiumでは、IntuneやDefender for Businessなど、端末管理や脅威対策に利用できる機能が増えます。ただし、ライセンス変更だけで★3の要求事項を満たせるわけではなく、設定・運用・社内体制の整備も必要です。

Q
SCS評価制度の担当者はIT部門だけでよいですか?
A

IT部門だけでなく、経営層、人事、総務、法務、各業務部門との連携が必要になる可能性があります。アカウントや端末はIT部門、教育は人事、契約は法務というように役割を整理すると進めやすくなります。

まとめ

  • ★3対策を、技術・運用・体制の3つに分けて整理する
  • Microsoft 365で対応できる範囲と、別途対策が必要な範囲を切り分ける
  • Microsoft セキュア スコアを、Microsoft 365環境の現状確認に活用する
  • 設定内容や規程、点検記録を証跡として残す
  • リスクの高い項目から優先順位を付けて改善する

SCS評価制度への準備は、製品を追加することから始めるのではなく、現在のMicrosoft 365をどこまで活用できているかを把握することが第一歩です。

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参考資料

本記事の作成にあたり、以下の経済産業省、IPA、Microsoftの公式情報を参考にしています。