「Microsoft 365を導入しているから、SCS評価制度への対応もある程度できているはず」「Business Standardのままでよいのか、Business Premiumが必要なのか分からない」

SCS評価制度の★3を検討する中小企業のIT担当者にとって、Microsoft 365で対応できる範囲は気になるポイントではないでしょうか。

SCS評価制度とは、企業のセキュリティ対策状況を共通の基準で評価し、★で可視化する制度です。
結論から言うと、Microsoft 365は★3に向けた技術対策を幅広く支援できますが、Microsoft 365だけで★3を取得できるわけではありません。

★3にはシステム設定のほか、社内規程、教育、取引先との取り決め、ネットワーク機器の管理なども含まれるためです。

この記事では、★3の評価基準81件とMicrosoft 365の対応範囲を整理します。

※本記事は2026年10月15日時点の公表情報をもとに作成しています。

この記事のポイント:

  • ★3の評価基準81件のうち47件に、Microsoft 365が技術的に関与できる
  • Microsoft 365 Business Premiumでは、条件付きアクセスや端末管理、マルウェア対策などを進めやすくなる
  • 規程・教育・体制などは、Microsoft 365とは別に整備が必要になる

SCS評価制度★3では7分野の対策が求められる

SCS評価制度の★3は、一般的なサイバー脅威に対処できるセキュリティ水準を示す段階です。確認範囲はIT製品の導入状況だけではありません。

分野主な確認内容
ガバナンスの整備セキュリティ推進体制、守秘義務、セキュリティ対応方針
取引先管理取引先とのシステム上の関係、機密情報の取扱い、インシデント発生時の役割・責任
リスクの特定情報機器・ソフトウェア・ネットワークの把握、外部情報サービス、機密区分
攻撃等の防御ID・認証、アクセス権、教育・訓練、バックアップ、更新、マルウェア対策、ネットワーク境界防護
攻撃等の検知ネットワーク接続・データの監視
インシデントへの対応対応手順、連絡・報告ルート、点検、事例共有
インシデントからの復旧事業継続要件に沿った復旧準備

★3の評価基準81件のうち約6割の48件が、「攻撃等の防御」に集中しています。ID管理、多要素認証、端末ロック、更新プログラムの適用、マルウェア対策などが主要な確認項目です。

7分野それぞれの要求事項と評価基準については、関連記事をご覧ください。

Microsoft 365が★3の技術対策を支援できる範囲

IPAが公表している★3の評価基準81件を、Microsoft 365の機能でどこまで対応できるかという観点から当社で整理すると、次の4つに分類できます。

対応区分件数Microsoft 365の位置付け
◎ 技術的に充足23件機能を設定すれば、評価基準を技術的に満たせる
○ 一部支援24件機能で支援できるが、ルール策定・文書化・運用が別途必要
△ 文書・体制が中心23件規程・体制・教育の整備が中心。Microsoft 365は掲載・周知・記録を補助
× 対象外11件ネットワーク機器・サーバー・物理対策など
※評価基準の内容をもとにした当社独自の分類です

◎と○を合わせた47件では、Microsoft 365が技術的に関与できます。
代表的な対策は、多要素認証、アカウント・管理者権限の管理、端末管理、マルウェア対策、外部共有の制御などです。

47件のうち27件は、Business BasicやBusiness Standardを含むすべてのプランで対応できます。残りの20件のうち、17件はBusiness Premium(またはE3/E5)が必要で、3件はバックアップなどのアドオンを追加して対応します。

ただし、これらの件数は★3の取得可否を示すものではありません。「Microsoft 365による設定」と「社内での運用」を分けて確認するための目安です。

Microsoft 365 Business Premiumで対応しやすくなる主な対策

Microsoft 365 Business BasicやMicrosoft 365 Business Standardでも、ユーザーIDや管理者IDの管理、セキュリティ既定値群による多要素認証、SharePointのアクセス権管理などを進められます。

一方、Microsoft 365 Business Premiumには、Microsoft Entra ID P1、Microsoft Intune Plan 1、Microsoft Defender for Business、Microsoft Defender for Office 365 Plan 1などが含まれます。
これにより、次のような対策を進めやすくなります。

  • 条件付きアクセスによる、接続条件に応じた認証強化
  • Microsoft Intuneによる端末、PIN、アプリ、更新プログラムの管理
  • Microsoft Defender for Businessによるマルウェア対策と脅威検知
  • Microsoft Defender for Office 365による、危険なリンクや添付ファイルへの対策
  • Microsoft Purviewによる秘密度ラベルを使った情報保護

ただし、利用できる機能が契約に含まれているだけでは不十分です。対象ユーザーへの適用、例外設定の確認、認証方法の登録状況なども点検する必要があります。

Microsoft 365だけでは対応できない評価基準もある

★3の評価基準には、Microsoft 365の範囲外となる項目が11件あります。代表例は次のとおりです。

  • ネットワーク構成や設置場所の把握
  • ルーターやファイアウォールの台帳管理
  • ネットワーク機器の管理パスワード変更
  • ファイアウォールの受信通信・ルール管理
  • 開発環境と本番環境の権限分離
  • サーバーやネットワーク機器の設定変更管理

たとえば、Microsoft Defender for Businessは端末上で不正な通信を検知・遮断する対策に利用できます。しかし、オフィスのルーターや境界ファイアウォールの設定まで管理するものではありません。

このような項目には、ネットワーク機器側の設定、構成図、機器台帳、変更申請の記録など、Microsoft 365とは別の対策が必要です。

規程の周知と記録の管理にはMicrosoft 365を活用できる

「文書・体制が中心」と整理される23件は、Microsoft 365の機能だけでは充足できません。一方で、文書の公開、周知、確認記録の保管には活用できます。

たとえば、次のような運用です。

  • セキュリティ対応方針をSharePointに掲載
  • 改定内容をTeamsやOutlookで周知
  • Formsで確認済みの従業員を記録
  • Plannerで年1回の点検を予定化
  • Microsoft Listsで緊急連絡先を管理
  • 教育資料と受講記録をSharePointに保管

重要なのは、ツールを使うこと自体ではなく、誰が、いつ、何を実施し、どこに記録を残したかを説明できる状態にすることです。

まずは設定・運用・対象外領域を分けて棚卸しする

最初からすべての機能を導入するのではなく、次の順番で現状を確認することが重要です。

  1. ★3の評価基準に対する現在の対応状況を確認する
  2. Microsoft 365で設定できる項目を洗い出す
  3. 現在のライセンスで利用できる機能を確認する
  4. 規程・教育・点検記録などの運用面を整理する
  5. ネットワークや物理対策などの対象外領域を分ける

すでに実施している対策でも、設定状況や点検結果が記録されていなければ、★3の確認を行う専門家に説明しにくくなります。設定変更と同時に、確認日、担当者、結果、証跡の保管場所を残す運用まで決めておきましょう。

Microsoft セキュア スコアを使った現状確認や、証跡の保存先・担当者・確認頻度の決め方は、関連記事で解説しています。

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よくある質問(FAQ)

Q
Microsoft 365 Business Standardのままでも準備できますか?
A

はい。多要素認証やアクセス権管理、規程の共有など、現在のプランで進められる対策もあります。まずは現状を棚卸しし、Intuneや条件付きアクセスなどが必要になった段階で、Microsoft 365 Business Premiumへの変更を検討しましょう。

Q
Microsoft 365の設定画面を保存すれば証跡になりますか?
A

設定画面は技術対策を示す材料になりますが、それだけで十分とは限りません。設定の目的、対象者、確認日、点検結果などを記録し、社内規程や運用記録と関連付けて保管することが重要です。

Q
Microsoft セキュア スコアが高ければ★3を取得できますか?
A

Microsoft セキュア スコアは、SCS評価制度とは別の指標です。スコアだけで★3の取得可否は判断できませんが、Microsoft 365環境の現状把握や、改善項目の優先順位付けには活用できます。

まとめ

  • Microsoft 365は★3の技術対策を幅広く支援できる
  • Business Premiumで端末・ID・脅威対策を強化する
  • 規程、教育、体制、記録を別途整備する
  • Microsoft 365の対象外領域を切り分ける

Microsoft 365は、SCS評価制度★3への対応を進める有力な基盤です。ただし、重要なのは機能を増やすことではなく、現在の設定、運用、証跡、対象外領域を整理することです。

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参考資料

本記事の作成にあたり、以下の経済産業省、IPA、Microsoftの公式情報を参考にしています。